辻信一小世界 ≫ ぶらぶらフィールドノート

2013.6.24@鹿児島


「NAGAYA TOWER」を案内してくれたのは、サブマネージャーであり社会福祉士でもある北村美樹さん。大学卒業後、マザー・テレサの「死を待つ人の家」で一年間ボランティア活動に従事した経験の持ち主。写真は2階にある「みんなのリビング」のソファで。「共」の場にあるソファもベンチ!

堂園メディカルハウスのドクターで、オーナーでもある堂園晴彦さんにお会いした。
堂園メディカルハウスは鹿児島中央駅近くに位置する緩和医療や在宅医療を含む総合診療施設である。その名の通り、「家」のようなあたたかい雰囲気を大切にされていて、ここに入るには靴を脱いで裸足にならなければならない。スリッパがないので、フローリングの床はいつも丁寧に拭かれ、チリひとつ落ちていない。

堂園先生は医学生時代に寺山修司さんの「天井桟敷」に所属していたり、マザー・テレサの施設にボランティアを派遣するNPOを設立されたり、ビオトープのある幼稚園や保育園の理事長でもあり、ひと言でいえば、「変わった方」である。先生自身によれば、鹿児島3変人のひとりであるらしい。

その先生が、また変わったことをはじめられた。病院の目の前に「NAGAYA TOWER」という賃貸住宅を建てられたのだ。「NAGAYA TOWER」は老若男女、健常者、障害者、乳幼児、学生、社会人、老人など、社会を構成するあらゆる人々が、助け合いながら暮らしをともに営んでいく、現代版長屋を目指した施設である。

「NAGAYA TOWER」のウェブサイトには次のように書いてある。

「江戸時代の長屋のように、住人のみんなが知り合いで、できる事は自分でしながらも、互いにさりげなく手を貸しあって暮らしていくことを目指します。 皆が集うための共有エリアがたくさんあります。趣味のスペース、空中庭園、共有キッチン・ダイニング、大きなお風呂(2ヶ所)、トランクルーム、ひろびろバルコニーなど、住人が行き交う場所を作りました。」と。

大家でもある堂園先生は、「血のつながりに囚われない人間同士の“絆”を再生するしかない」と、現代人が嫌ってやまない面倒なご近所さんとのつきあいを、あえて、生活のなかにつくり、コミュニティを取り戻す意気込みを体を張って具現化したのだ。

“つながり”と言いながら、つながる相手に同質性しか求めない人はここに住むことはできないだろう。本当の“つながり”とは多様性を認めるということを、「NAGAYA TOWER」の住人のみなさんが実践され、その様子が発信されていくことを大いに期待している。

あらゆる人生観、思想、生活習慣を持つ多様な人々が交じり合いながら、気遣い、助け合いの求められる「共」の場のある生活空間が今後どのようにつくられ、どのように展開していくのか、本当に楽しみだ。

住人のなかのひとりの高校生が、「今日のひとこと」を付箋に書いて、共有の場にさりげなく貼って出かけていくのを日課にしている。
訪ねた日の「今日のひとこと」はこうだ。

「花よりも 花を育てる 土になれ」


(う)

NAGAYA TOWER  http://www.nagaya-tower.com/