サティシュ・クマール ≫ Resurgence

2013年 7・8月号 No.279

サティシュ・クマール ”WELCOME”
The Ecozoic Era (エコゾイック時代の到来)

毎号の冒頭を飾るのはサティシュの巻頭言、「ウェルカム」。忙しい読者も、これだけは読んでほしい。声に出して(サティシュオタクの人は、彼のしゃべり方を真似るように・・・)読むとより一層心に響き、また英語が上達すること請け合いだ。今回のサティシュの巻頭言は、リサージェンスの今号のテーマである“The Ecozoic Era”という、一般の読者にはあまりなじみのない言葉の解説としての意味をもっている。

その解説をまた日本の読者のために解説させていただこう。本文でサティシュも触れているように、このEcozoicという言葉は、1989年頃に、エコロジー神学で知られるThomas Berryがつくった新しい言葉で、6千5百万年前から現在へと続く“新生代(Cenozoic)”に代わる、地質時代区分における新しい時代を表すものだ。エコゾイックのエコはよく知られているように,家や住処を表すギリシャ語のオイコスから来ており、ゾイックは生きものを表すゾイコスから来ているという。エコゾイック代(era)とは、だから、「生きものの住処としての地球の時代」といった意味になる。

これと関連して、2000年に大気化学者のパウル・クルッツェンによって“Anthropocene” という造語があり、これは、更新世や完新世に続く新しい地質時代区分を表すものとして提案された。anthropoとは人間のことだから、訳せば「人新世」とでもなろうか。サティシュは、この言葉に込めたクルッツェンの良い意図は汲み取りながらも、やはりそれが、現代世界の人間中心主義と共鳴してしまいやすいことを懸念する。この地球で、自分たちだけを特別な存在と思いなし、他のすべての生きものが自分たちに利用されるためにだけ存在しているかのように考え、ふるまう人間の傲慢さは、しかし今、人間自身を存在の危機の崖っぷちに立たせている。そんな今こそ、我々は、アントロポセンのもう一歩先の新しい時代にふさわしい名としてエコゾイックを掲げようではないか、と今号のリサージェンスは呼びかけている。

トマス・ベリ―がエコゾイックという言葉に込めた思いについて直接あたりたい読者は、ネットで “The Ecozoic Era” by Thomas Berryで検索すると彼の1991年の文章が読める。なおベリ―の日本語の本としては『パクス・ガイアへの道』がある。

またThe Ecozoic Timesというサイトがあって、そこに「エコゾイック」の意味が詳しく論じられている。この言葉がトマス・ベリ―とブライアン・スウィムという二人の知の巨人のやり取りの中から、生まれ出るエピソードが紹介されていて、ワクワクさせられる。