ゆっくり小学校 ≫ 婦人之友誌連載

連載1 安心してサボれる学校

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ぼくは辻信一、スロー・スモール・スクール(ゆっくり小学校、略称はその頭文字をとってSSS)の校長です。とはいえ、この学校は、まだ現実世界にはありません。ぼくの、そして何人かの友人たちの心の中で、それこそゆっくり育っていて、2014年には、いよいよ現実世界へと静かに降り立つことになっています。もちろん、生き物と同様、生まれた後も育ち続ける。学校とはそこで学ぶ生徒が育つ場所ですから、学校と生徒とが同時に育つ、ということになります。

ぼくはこの連載をSSSが育ってゆく現場、つまり学校のようなものだと勝手に考えています。読者である皆さんはその学校の生徒ということになるでしょうか。生徒が嫌なら先生でも用務員でもPTAでもいい。どちらにしても、SSの共犯者、いや失礼、共謀者(それもよくないか)、共同参画者、協力者、それでも嫌なら、少なくともやさしく見守る人になるのです。いや、なっていただきたい。

この学校――つまりこの連載――では、SSSの基本的な理念を練りあげていきます。そのために、各回ひとつずつ特に重要だと思われるキーワードをとりあげて考える。

「理念とは固い言葉ですが、ぼくのイメージしているのは、北海道浦河の精神障がい者の自助・互助コミュニティ「べてるの家」が「理念」と呼ぶ一連の合言葉です。例えば、「弱さを絆に」「弱さの情報公開」「降りてゆく人生」「安心してサボれる職場づくり」……。そのままSSSの理念としても使えそうなものばかりです。

さて、キーワードとしてまず挙げたいのはSSSの三つの言葉たち。

一番簡単そうな「スクール」からいきましょうか。この言葉の語源となったギリシャ語の「スコーレ」はもともと余暇や自由時間を意味していました。そこから哲学、さらにそれを学ぶ学校、という意味が派生していったようです。

学校には授業の合間に「休み時間」や「自由時間」がとってありますね。しかし、これはとても妙なことなのです。本来は、スクールそのものが仕事に対する余暇であり、義務に縛られない自由時間だったのだから。

学校とはもともとサボる場所だった!?

2014年 婦人之友 1月号掲載

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ナマケモノからナマケることを学ぶ