ゆっくり小学校 ≫ 婦人之友誌連載

連載9 紙の中に雲が浮かんでいる

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イギリスのスモールスクールと同様、わがSSSはエコな学校です。でも改めて、エコって何でしょう?理科や環境教育の授業ではよく「自然について学ぶ」と言う。でも、もっと大切なのは「自然から学ぶ」ことだ、とサティシュ・クマールは言います。つまり、自然こそが先生なのだ、と。

“エコ”という言葉の源はギリシア語で「家」や「住処」を意味するオイコスという言葉です。前に、サティシュの等式〈E=4H〉を紹介しましたね。教育(E)とは、ヘッド・ハート・ハンズ・ホームという4つのHからなっている。オイコスとは、その中にあるホームです。では、ぼくたちにとってホームとは何かと言えば、まず家庭。そしてコミュニティ、生態系、地球です。

オイコスにロゴスというギリシア語をつないでできたのがエコロジー、つまり、「住む場所についての知」という言葉です。生態学と訳されますが、それは、個々の研究対象をバラバラに切りとってきていたそれまでの科学が見失ってしまった、全体的(ホリスティック)なつながりをよりよく理解しようとする科学です。世界を形作っている様々な要素が、どのように互いに関係し合っているかを探るのです。

実は、仏教でも、「縁起」という言葉を使ってこれと同じことを教えてきました。

「この一枚の紙のなかに雲が浮かんでいる」。これは現代仏教の代表的指導者であり、詩人であるティク・ナット・ハン師の言葉です。雲なしに水はなく、水なしに木はなく、木なしに紙はないのだから。さらに、紙を作るには木こりが必要で、人間や樹木が育つには空気や陽光や土や他の生きものたちが必要、というように、あらゆるものがこの一枚の紙の中にあると言える。そう考えれば、もうこの世界には、「私」に無関係のものは何一つない、と師は言うのです。

エコとはこうした無数のつながりに気づくこと。誰も皆、家、共同体、生態系、地球という「ホーム」で、相互依存の網の中に生き、生かされている存在です。

ゆっくり小学校の朝は瞑想で始まります。お鈴の音を合図に、目を閉じて、息に意識を向けます。息を吸っている、そして吐いていることに気づく。少し涼しい息が鼻先を通って入ってゆく。温かな息が出てゆく。その空気は、過去、現在、未来のすべてのいのちが呼吸するのと同じ空気です。

この一息によって私は生きている。そしてすべての命に連なっている。なんとありがたいことでしょう。

今を、そして未来を生きるすべての生きものと、このきれいな空気を、分ち合う!これに気づいたあなたは、エコロジストです。


2014年 婦人之友 9月号掲載